令和6年度太陽エネルギーセミナー(動画)第1弾
<10分でわかる! 断熱住宅のススメ>

断熱住宅は省エネになるだけでなく健康にいい⁈エコなおうちのメリットを、建築士と医師が紐解きます。

Presenters

一級建築士
一般社団法人ロングライフ・ラボ代表理事

医師
イシハラクリニック副院長

清水: 今12月なんですが、僕たちがいるこのおうち、入ってすぐ暖かくなかったですか?

石原: 私もびっくりしました!冬なのに冬と思えないぐらい暖かいです。

清水: 玄関から暖かいですよね。実はこの家、家中を家庭用の14畳用のエアコン1台で暖房してるんですよ。高性能な断熱住宅がどれほど省エネで快適か、石原先生と一緒に紐解いていきましょう!

寒い家は危険?  

清水: いきなり「寒い家は危険」といっても家の中で凍え死ぬ方ってほとんどいないので、みなさん、ピンとこないと思うんです。そこで交通事故と家庭内事故の死亡者数を比較してみます。
まず、交通事故は年々減少してまして、今2,678人とずいぶん減っています。ただ、家庭内の事故は年々増加してまして、約16,000人の方が亡くなっているんですね。

石原: ということは2023年の家庭内事故は交通事故の約6倍ってことですね。家の中の方が危ないんですね。

清水: みなさん、家庭内の事故の原因はどのようなものを想像しますか?転倒や転落が多いという風に思われがちですが、実は溺れて亡くなる方が43%を占め、なかでも浴室で亡くなる方がなんと6,354人と最も多いんです。また、溺れて亡くなる方は寒い時期に多く、77%が家庭内で亡くなっています。冬のお風呂で亡くなる方が多いと言われてるんですよ。
なぜ冬の風呂で亡くなる方が多いかを石原先生、医学的にご説明していただけますか?

石原: 冬のお風呂で亡くなる方が多いのは、気温差による急激な血圧上昇と降下で意識を失ってしまって、浴室内で溺れてしまうということなんです。
暖かい居間から寒い浴室に行くと寒いので、血管がぎゅっと縮み、血圧がぐっと上がります。そこから暖かいお風呂に入ると今度は血管が開きます。血圧が上がったり下がったりすることで、脳梗塞だったり心筋梗塞、そういった病気を発症しやすくなります。また、寒いのでゆっくりお風呂に入っていると、のぼせてきて血管が開いてしまって意識がなくなり、そのまま溺れてしまうんです。

清水: なるほど。夏の熱中症って随分ニュースとかで注意喚起しているのを耳にしますが、冬も実は危ないんですね。熱中症の10倍くらい浴槽内で亡くなられている方が多いというデータもあります。

石原: 冬の寒い時期のお風呂は気をつけないといけないですね。

冷えは万病のもと  

清水: 昔から冷えは万病の元と言いますが、体が冷えるとどんな影響がありますか?

石原: まず体温が1度下がってしまうと免疫力って約30%落ちるんです。なので低体温の人の方が感染症にかかりやすくなると言われています。
全ての臓器は血液が運んでくれた栄養素や酸素で元気に働いていますから、血流が悪くなると臓器の不調、お肌の不調が起こります。さらに、癌細胞は低温の環境が好きなので癌のリスクも高まってきます。ほかにも低体温の方は気の巡りも悪くなることで、気持ちが落ち込みやすくなったり、眠れないといったことが起こります。
免疫力、臓器の不調、メンタル、いろんなところに関わってくるんですね。なので本当に冷えは万病の元になります。

体を温めたときの健康効果  

清水: 冷えると免疫力が低下すると言われている理由について教えていただけますか?

石原: 私たちの細胞の中で行われているのは化学反応なんです。この化学反応がスムーズに進んでいくためには酵素が働きかけなきゃいけない。体にある酵素ですから37℃ぐらいで1番よく働く酵素が入ってるんですが、体が冷えてしまうとその細胞1個1個での働きが落ちてしまう、ということなんです。全身の細胞もですが、免疫細胞1個1個の働きが落ちることによって免疫力が落ちるんですよ。
逆に言いますと、インフルエンザ等のウィルスに感染するとすごく高い熱が出ますよね。これは体温を上げて免疫細胞の働きを活性化させてウィルスと戦おうとしてくれてる体の反応なんですよ。

清水: なるほど。では普段から体を温めるとどのような良いことがあるんですか?

石原: 体温が上がると免疫力も高くなるので感染症の予防になりますし、全身の血流が良くなることで、肩こりや頭痛、臓器の不調の改善、お肌の代謝も良くなって、もう本当にいいことづくめです!

断熱性が高い家、暖かい家の健康効果  

清水: 近畿大学の岩前先生の有名な研究がありまして、断熱性が高い家に引っ越していくと病気が改善方向に向かうんです。断熱性が高く冬でも暖かい家に住むと健康に良くなる、しかも断熱性が高ければ高いほど、その効果が顕著に現れるんです。

石原: アレルギーや感染症が減ったり、血圧が下がったり、そういったことかなと思います。

清水: そうですね。もう1つ、暖房を止めて寝た子どもと、朝までつけた子どもの風邪をひく確率などを調査した、産業医科大学の藤野先生らの研究結果をご紹介しますね。
結果を比較しますと、朝まで暖房をつけて寝た子どもの方が、なんと77%も風邪をひきにくいという結果でした。

石原: お部屋の中の空気が冷たいと、冷たい空気を吸い込んでしまって、肺の血流が悪くなる、肺の免疫力が下がることによって感染症にかかりやすくなるということなんですね。

既存住宅の断熱のススメ  

清水: なるほど。では今住んでる家をどうしましょう?
ここからは省エネで暖かく、健康に暮らせる住まいにする、具体的な方法を建築士の目線からご説明していきたいと思います。
このお宅のように、高性能な断熱材や窓、玄関ドアというように全体的に高断熱な建材で包むのが理想なんですが、今のお住まいで大規模なリフォームは大変ですよね。実は熱の半分以上は窓やドアから逃げるので窓の断熱性を上げるのが効果的です。例えば、今ある窓の内側にもう1つ窓をつける内窓ガラスが非常に手軽です。

石原: 窓から58%も熱が逃げていくなんて知らなかったですね。

清水: 窓の断熱リフォームは国や東京都の助成制度も充実しています(令和6年12月時点)ので、タイミングよく補助金を活用できるとリーズナブルにリフォームできますね。

石原: 窓を変えるだけでも暖かいおうちになって、健康にも繋がるってことですね。

新築住宅の断熱のススメ  

清水: 一方、これから新しいお宅を建てる方、国が決めた「断熱等級」というものさしがありまして、このものさしを参考にしてください。少ないエネルギーで家中を快適にするには、断熱等級6以上を目指してほしいんです。今、私たちがいるこのお宅の断熱等級は6.5ぐらい、7に非常に近い断熱性が高い住宅なので、冬暖かいだけじゃなく夏もエアコン1台で快適に過ごすことができます。ぜひ断熱等級に着目してみてください。
また、断熱だけでなく太陽光発電や蓄電池を設置すると、さらに電気代が減ったりCO₂も減りますので、家計にも、地球にも優しくなりますね。
東京都には東京ゼロエミ住宅という独自の省エネ住宅の認証制度があります。断熱性の高い断熱材や窓、省エネ性の高い設備機器を取り入れた、人にも地球にも優しい住宅です。省エネで家中が暖かい住宅がどんどん増えて欲しいですね。

Message

清水: 最後に、地球の天候についてちょっと触れさせていただきます。「地球の平均気温が産業革命以前に比べて1.5度を超えると気候変動が後戻りできない」と言われています。ヨーロッパの最新の気候情報サービス機関※の情報によりますと、今年2024年の平均気温はなんと1.5度超えていると言われています。ですから「地球温暖化対策待ったなし!」です。東京都の家庭からのCO₂排出量は全体の3割を占めます。ぜひ、地球と人の健康のために省エネで暖かい住宅で暮らしていただきたいと思います。

石原: そうですね。暖かい住宅に住むことによって風邪などの感染症にかかりにくくなったり、血圧の上昇、ヒートショックも予防できます。暖かいおうちに住みながら省エネにもつながりますので、みなさんご自身とご家族の健康、そして地球の健康のためにも、ぜひご自宅の断熱性のことを考えていただけたらなと思います。

※ ヨーロッパの気象情報機関:コペルニクス気候変動サービス
(Copernicus Climate Change Service)

本動画シリーズ「太陽光・再エネのススメ」は、太陽光発電設備や再エネ電気の導入、断熱住宅による省エネ効果、健康面での効果などのメリットについて、有識者や専門家、事業者に解説いただいたものです。【撮影:令和6年12月】

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