H28年度インタビュー第1回
●仲 雅広(なか まさひろ)さん
三鷹市生活環境部環境政策課 課長補佐
●竹内 敏紀(たけうち としき)さん
三鷹市生活環境部環境政策課 主事
三鷹市では、毎年6月の環境月間に合わせて環境学習イベントを開催しています。
今年は、メインイベントとして、市内の小学生からオーディションで出演者を選出したエコミュージカルファンタジー『エコ??の国のありす』を6月26日に上演。会場の三鷹市公会堂「光のホール」には、大勢の市民が集まり、開演前にロビーで行った4つのエコイベントとエコミュージカルを楽しみました。
このイベントは市と「みたか環境活動推進会議」、それに市民キャストとして出演した小学生や市内の劇団など、多くの人々との協働により開催されています。
市の事務局担当者としてこのイベントを支えた竹内敏紀さんと、上司として竹内さんをバックアップした仲雅広さんに話を伺いました。
エコミュージカルは10年以上前から。今回初めてオーディション形式に
――6月の環境月間の行事として、エコミュージカルファンタジーと銘打った『エコ??の国のありす』を上演されたと聞きました。どのようなきっかけがあったのでしょう。
仲 雅広さん
仲 環境問題に興味を持ってもらうためにミュージカルを上演するということは10年以上前から行ってきました。直近の4回は市内に拠点を置く劇団に上演をお願いしていますが、私どもが在籍する以前は、関西にある劇団さんにお願いしたこともあるそうで、市の職員が環境問題を扱う台本作りに携わり、苦労したという話も聞いています。
ミュージカルの上演方式については、劇団員だけが出演する通常の舞台形式のものや、来場した子どもたちがステージに上がって一緒に歌う形式にしたこともあります。
エコミュージカルは毎年好評をいただいているのですが、劇団員の演技によって一方的に「環境問題」を伝えるだけでなく、市民が双方向で環境保全の大切さを伝え合う方が良いのではと考えました。
そこで、今年は趣向を変えて、オーディションで市民キャストを選出する「市民参加型エコミュージカル」を制作してみようということになりました。
市でこのミュージカルの企画、オーディションから開演まで一連のイベントを担当したのが竹内です。
――竹内さん、このイベントの全体像はどのようなものでしょう。
竹内 敏紀さん
竹内 はい。このイベントは「エコミュージカルとエコイベント」が正式名称で、市の単独事業として実施しているものではなく、市と「みたか環境活動推進会議」の協働によって開催している事業です。
今回のエコミュージカルを開催するにあたっては、会議を構成する13名の委員の中から、立候補により実行委員会を作り、事業の検討を進めました。
オーディションのアイデアやエコイベントの内容については、実行委員会との話し合いの中から生まれたものです。
*「みたか環境活動推進会議」について:三鷹市では三鷹市環境基本計画2022(第1次改定)において、目指すべき環境像として「循環・共生・協働のまち みたか」を掲げています。「みたか環境活動推進会議」はこの環境像の実現を目指して、環境情報の収集・提供や意見交換を行い、環境保全の取り組みを協働で進めることを目的に、公募で集まった市民・団体・事業者で構成される組織です。エコミュージカルのほかにも、「ゴミ拾いはスポーツだ」を合言葉に、チームで力を合わせ、制限時間内に拾ったゴミの質と重量を競い合う「スポGOMI大会」の開催など、各種の啓発活動を実施しています。
「みんなのエコに対する思いをエコミュージカルで表現しよう!」
――オーディションの応募はどのようにしたのでしょう。
竹内 オーディションの実施と市民キャストの出演については、いずれも初の試みであったことから、出演希望者がどれくらい集まるか不安がありました。
そこで、多くの応募者を獲得するために、エコミュージカルの出演者募集チラシを作成し、市立小学校の2年生から6年生までを対象に配布し、併せて「広報みたか」やホームページでの周知活動を行いました。
チラシには「みんなのエコに対する思いをエコミュージカルで表現しよう!」「三鷹市のプロ・ミュージカル劇団「イマジンミュージカル」が、みなさんにダンスなどをきちんと指導させていただきます。ダンスや歌が大好きな方を待っています!!」の案内文が。
――何人ぐらい集まりました?
竹内 応募していただいた子どもたちは全員出演させてあげたいと考えていましたが、劇団との話し合いで、50人程度という募集をかけました。その結果、驚くことに、丁度その50人の応募がありました。
子どもたちが、歌唱力や演技力に差があっても全員が楽しく出演できるように内容をどうするか、出演シーンをどうするかなど、劇団と相談しながらの脚本づくりがはじまりました。
「歌、覚えてきてくれたかな?」「はーい!」
――オーディションが5月14日で、開演が6月26日です。かなり短い期間の練習でしたが、どのような練習でした?
竹内 オーディション当日は、多くの熱心な保護者がお子さんと一緒に会場に来られました。そのため、プロのオーディション現場そのものの雰囲気になり、適度な緊張感と活気が生まれて、それが後の練習にも良い影響を与えたようです。
レッスンスペースの関係もあるので、練習の際には保護者の方は送り迎えだけにしていただき、レッスンは子どもたちだけで進める形にしました。
劇団からも、子どもたちが練習に集中できる環境の中で本格的なミュージカルに仕上げたいという意向がありましたから。
――レッスンは最初からうまくいきましたか?
竹内 最初は、低学年の子供もいるので、大変元気があり、意志の疎通を図ることが難しいこともありました。始めは友達とお喋りばかりしてしまっていた子供たちも、プロの劇団による演技指導を受けるうちに練習への集中力が高まっていく様子が感じられました。
練習は「楽しく笑顔で」というのをモットーにしていましたし、子供たちはやる気があって応募しているので上達も速かったです。
驚いたのは、最初の歌唱練習の際に、劇団の先生からの「歌、覚えてきてくれたかな?」という投げかけに対して、子どもたちが「はーい!」と返事をし、音楽に合わせてすぐに歌い始めることができたことです。
自宅で練習してきていたのでしょうね。子どもたちの熱意を感じ、感動しました。
子どもたちが応募用紙に書いたメッセージをミュージカルのセリフに
――台本には、生徒役のセリフの中に「使わない電気のスイッチを切ります!」とか「買い物のとき、マイバッグを持っていきます!」などがありますが…。
竹内 構成や脚本は劇団が担当し、実行委員会からも意見を出させていただきました。
実は、出演者募集のチラシの裏側が応募用紙になっていまして、そこに「『わたしが考えるエコ活動』について、思いをメッセージにして記入してください。」という欄を設けました。子どもたちから様々な環境に対するメッセージが寄せられ、その一部を子どもたちのセリフに入れ込むようにしました。
仲 応募の際に書いてもらった「エコに対するメッセージ」を、大勢の来場者の前で、セリフとして伝えたり歌ったりすることで、子どもたちの体感として心に残ると思います。
出演した子どもたちは、ミュージカルに出演することだけが目的ではなく、自分たちの舞台で、皆の力によって、来場者に環境保全の大切さを伝えることの大切さを理解してくれたようです。
開場のあちらこちらで、おじいちゃん、おばあちゃんも含めた家族の記念撮影が
――これがイベント案内のチラシですね。楽しそうな雰囲気が出ています。
竹内 写真を劇団に提供してもらい、私が作成しました。手に取った人が楽しい気持ちになれるように色やレイアウトを決めていきました。なかなか評判が良く、見る人の興味を引くことができる仕上がりになったと思います。
――レイアウトっていうかデザインも?
竹内 はい、手作りです。ただし、印刷だけは市内の業者にお願いしました。
エコミュージカル「エコ??の国のありす」はこんなお話し。 「ありす」は読書好きの女の子。大好きな『不思議の国のアリス』を読んでいるとウサギが現れ、不思議の国の冒険が始まります。しかし、そこは食べ物を大切にしないで喜んでいる変な国。「ありす」は「エコの森」で勉強し、この国は間違っていることを女王にわかってもらうため、エコクイズの対決をするのでした。どうしても自分の間違いを認めない女王に対して、ついに「不思議な星」が怒りだし、この国は大変なことに…。 「ありす」と一緒に環境を守ることを学び、「エコの国」を目指しましょう!
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――開演当日の来場者はどのくらい集まったのでしょう。様子をお聞かせください。
エコミュージカルの様子
仲 来場者は614人です。約700人収容の会場で、先着600人を予定していたのですが、いらした方全員に入っていただくことができました。客席に舞台用音響機器を置く場所もありましたから、実質的には座る場所を探すのに苦労するほどの混み具合です。エコミュージカルに加えて、開演前には、4つのエコイベントや市民から募集した環境標語の表彰式もあり、会場は大変な賑わいでした。
エコミュージカルを中心にしたこれまでのイベントですと、未就学児を連れた親子層が多かったのですが、今回はそうした方々も含めて、出演する子供の家族、友達など、来場者の年齢層がずっと拡がりました。終演後には、会場のあちらこちらで、おじいちゃん、おばあちゃんを含めた家族の記念撮影をしているのを見かけました。
ミュージカルの開演前には多彩なエコイベントも
――今、仲さんから話がありましたが、チラシには「ロビーにてエコイベントも開催」とありますが、具体的にはどんなことを?
竹内 開演時刻までの1時間を利用して4つのエコイベントを開催しました。
一つは「みたかの花と緑を紹介」というもので、「NPO法人花と緑のまち三鷹創造協会」が開催する養成講座を受講し、市内で活動している「花壇ボランティア」、「緑のボランティア」の活動紹介です。ボランティアの方からいろいろ話を聞いているうちに、実際にボランティアに参加したいという来場者もいたようです。
二つ目は「エコワークショップ」です。これは、みたか環境活動推進会議の委員が古紙を再利用して作成した白いうちわを400個ほど用意し、子どもたちに自由に絵を描いてもらうものです。実は、そのうちわをミュージカルで使うシーンがあり、自分で作ったうちわを使ってミュージカルに参加することができるわけです。
三つ目が「おもちゃの病院」です。「三鷹市消費者活動センター運営協議会」が運営する「おもちゃの病院」に出張形式で参加していただき、当日子供たちが持参した壊れたおもちゃを「治療」してもらいました。これも物を大切にするという観点からのイベントです。
四つ目が「ゴーヤの苗のプレゼント」です。来場者にグリーンカーテンを作ってもらうことを目的に、先着150名にゴーヤの苗の引換券をお渡しし、ミュージカル終演後に一世帯2株をプレゼントしました。この苗は、「オール東京62市区町村共同事業『みどり東京温暖化防止プロジェクト』」において給付されたゴーヤの種を、「NPO法人花と緑のまち三鷹創造協会」にお願いし、市内の苗圃(びょうほ:苗を育てる畑)にて育てていただいたものです。
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開演前ホールの様子 |
来年も是非、このイベント開催を
――6月26日は三鷹市をあげてのエコに関する一大イベントだったのですね。
仲 「エコミュージカルとエコイベント」の開催にあたっては、主催者である市と「みたか環境活動推進会議」だけではなく、市内で活動する団体や事業者など、なるべく多くの方々との協働により作り上げるという目的意識を持ち続けていました。
竹内 今回、「市民参加型エコミュージカル」を仕立てたことにより、市民キャストの力によって、さらに多くの市民の方に、環境保全の大切さを投げかけることができました。
来場者のアンケート結果を見ても、出演した子どもたちの環境に対する想いやメッセージを感じることができたとの声がありました。
市民キャストにはアンケートはとらなかったのですが、「来年も出たい」という声を聞きましたので次回は出演した小学生にもアンケートをとってみようと、仲課長補佐と話をしていたところです。
――ということは、来年もこのイベントを?
竹内 はい。私としては是非やりたいと考えています。
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