コラム:市場価格高騰のリスク

自社電源を保有せず、市場調達により電気料金(特に基本料金)の低減を図る新電力会社もいる一方で、過度な市場調達への依存は突発的な価格高騰のリスクを内在しています。自社電源からの調達、または発電所や卸電力会社との固定単価での相対契約が多い電力会社との契約や、需要家自ら自家消費電源を活用し、小売からの調達量を減らすことでリスクヘッジできます。

日本における市場価格高騰

2020年12月中旬ごろから、LNG燃料の供給不足に伴う同燃料市場の価格上昇や、厳冬による需要増加などによって、電力卸市場価格も上がり始めた。当時、LNG在庫量など市場価格関連の情報公開がなく、市場価格の上昇について様々な憶測が流れた。こうした中、売り札量よりも買い札量が上回る玉切れ状態が続き、確実に調達電力を確保するために連鎖的な値上がりが始まった。2021年1月には200円/kWhを突破、最高値は251円/kWhを記録している。
電気料金も大幅に値上がりしたため、自社で料金の一部を負担するなど、顧客維持のために自己負担を行う事業者や、経営が耐えられずに会社更生法の適用申請をした新電力会社も出ている。

※電力・ガス取引監視等委員会「今冬のスポット価格高騰に関する電力・ガス取引監視等委員会における分析について

気候変動を起因とした世界の事例

2021年2月の大寒波により、米国テキサス州ではガス・石炭・原子力・風力・太陽光などの発電源が耐え切れず需給がひっ迫。これにより市場価格も高騰し、8ドル/kWhを超える値上がりとなり、需要家によっては通常の70倍近い電気料金を請求されたという報道も出ている。
今回の大寒波の発生要因は、北極圏の寒気を取り囲むジェット気流が気候変動影響によって弱まったためとの見解も示されており、突発的な事象というよりは、今後も定常的に発生することも懸念されている。同州は電力自由化が進んでおり、電力卸市場は重要な電力の調達源の一つと言えるため、発電源などエネルギーインフラの凍結防止策に加え、分散型エネルギーによるリスク対応へのニーズも高まりつつある。

※ERCOTの市場単価データを元に作成